社内SEは本当に「楽すぎ」なのか?SIerから転職した私が感じた境界線

仕事

「社内SEって楽すぎって聞くけど、本当のところはどうなんだろう」「ネットでは『勝ち組』『天国』みたいに書かれているけど、実際に働いている人の感覚を知りたい」――そんな気持ちでこの記事にたどり着いた人が多いんじゃないかと思います。

検索すると「楽な理由はこれ」「楽じゃない理由はこれ」という整理記事はたくさん出てきますが、結論はだいたい「会社次第です」で締められていて、ちょっと物足りないんですよね。

私自身、前職がSIer(クライアント先のシステム開発を請け負う会社)、前々職が社内SEで、現在は再び中小企業の社内SEとして働いています。この記事では、現役で働いている立場から「どの場面が楽で、どの場面が楽じゃないのか」を、業務シーンの粒度で書いていきます。読み終わる頃には、自分にとって社内SEが「楽すぎ」に感じられそうかどうか、ある程度の見当がつくはずです。

先に結論:「楽すぎ」かどうかは業務スタイルとの相性で割れる

最初に結論からお伝えします。

社内SEには確かに楽な側面があります。残業が少ない、納期に強い外圧がない、人間関係が固定される、といったあたりは世間のイメージどおりです。

ただ、それを「楽すぎ」とまで感じられるかどうかは、本人の業務スタイルとの相性で大きく割れる、というのが私の実感です。マルチタスクを苦にしないタイプの人なら「楽だな」と感じる場面が多くなりますし、1つのタスクに集中したいタイプの人にとっては、むしろストレスを感じやすい職種でもあります。

「会社次第」というのも嘘ではないんですが、それと同じくらい「人次第」だ、と言った方がしっくりきます。

私の立ち位置(前提共有)

前提として、この記事の体感はあくまで「中小企業の社内SE」として働いている私の現場をベースにしています。

現職の情報システム部は複数のチームに分かれて動いていて、私はそのうち、販売管理システムを担当するチームに所属しています。業務の中心は、販売管理システムの機能開発・改修と、そのシステムに関する社内からの問い合わせ対応です。インフラ・ネットワーク・ヘルプデスク・その他の社内システムは、別のチームが受け持っています。

前々職も中小企業の社内SEでしたが、こちらはもっと小さな体制で、いわゆる「何でも屋」寄りの働き方でした。本文では、現職と前々職の経験を行き来しながら書く部分があるので、そのつもりで読んでもらえればと思います。

大企業の情シスや、自社サービスを持つ自社開発企業の社内SEだと、かなり様子が違ってくるはずなので、その前提で読み進めてもらえればと思います。

確かに「楽」だと感じる3つの場面

まずは、私自身が「これは確かに楽だな」と感じている部分から書いていきます。SIerから転職してきたので、比較対象は前職の客先常駐スタイルです。

1. 環境が固定される

一番大きいのは、上司・同僚・働く場所が固定されることです。

SIer時代は、案件によって常駐先が変わることがあって、人間関係や業務環境が定期的にリセットされていました。新しい現場に入るたびに、メンバーの呼び方を覚え直し、その現場のルールを覚え直し、ということを繰り返していたので、地味に消耗するんですよね。

社内SEになってからは、毎日同じオフィスで、同じ顔ぶれと働きます。それだけのことなんですが、メンタル面の安定感がまるで違います。

2. 納期を自社内で調整できる

仕事の相手が「身内」というのも、精神的にはかなり楽な部分です。

もちろん、依頼されたものを期限どおりに出すのが基本ではあります。ただ、本当にどうしようもないときには「すみません、来週まで待ってください」と相談すれば、現場の事情を踏まえて柔軟に動いてもらえます。

外部のお客さん相手だと、そう簡単にはいきません。「絶対この日まで」という強い外圧が常にある状態と比べると、社内SEの納期感は明らかに緩めです。

3. 通常月の残業が10時間以内に収まる

残業時間も、世間のイメージどおり少なめです。

私の現職だと、特別なイベントがない通常月の残業は月10時間以内に収まっています。SIer時代も、私自身は運が良く月45時間を超えることはなかったのですが、別プロジェクトが炎上してかなり厳しい状態になっている話はよく耳にしていました。あの空気と比べると、今の残業の少なさはハッキリと「楽になった」と言える部分です。

毎日定時に近い時間で帰れる、という生活リズムは、家庭やプライベートの予定を組むうえで本当にありがたいですね。

逆に「楽じゃない」と感じる3つの場面

ここまで読むと「やっぱり楽そうじゃん」と感じる人もいると思いますが、そうとも言い切れない側面もちゃんとあります。私自身が日々しんどいと感じている部分や、過去に経験した働き方を交えて3つ書いていきます。

1. 問い合わせ割り込みでマルチタスクが常態化する

個人的に一番きついと感じているのは、問い合わせによる割り込みの多さです。

私の現場でも、担当している販売管理システムについて「使い方を教えてほしい」「データを抽出してほしい」「画面のここの動きがおかしい」といった問い合わせが日常的に飛んできます。一件一件はそこまで重くなくても、開発・改修の作業中に何度も入ってくるので、結果としてマルチタスクが常態化します。

私のように、一つの作業に集中して頭を使いたいタイプにとっては、これがなかなか苦痛なんですよね。せっかく頭の中で組み立てた処理ロジックが、問い合わせ1本で吹き飛んで、また組み立て直すところからやり直し、ということが普通に起きます。

逆に、複数のタスクを並行して回すのが平気な人や、人と話すのが好きなタイプの人にとっては、ここはあまり苦にならないはずです。本当に向き不向きが出るポイントだと思います。

2. 「情シス=何でも屋」で担当範囲が広がりがち

少人数の情シスだと、よく言えば「広く担当できる」、悪く言えば「何でも屋になる」状況になりやすいと聞きます。PC・ネットワーク・サーバー・社内システム・セキュリティ・ベンダー対応・社員からの問い合わせと、一通り守備範囲に入ってきて、それに加えて本来IT部門の仕事ではないようなことまで頼まれる、というパターンですね。

私自身は今の職場ではチームで役割分担されているので、この「何でも屋」傾向はかなり緩和されています。ただ、前々職の社内SE時代は体制がもっと小さく、この感覚に思い当たる場面が何度もありました。

一番分かりやすかったのは、社内行事のために動画撮影と編集まで担当した話です。「映像はパソコン使うから情シスでしょ」という、なかなか乱暴な発想で振られた仕事でした。動画編集は本来の職務とは関係ないので、結局は手探りで覚えながら対応した記憶があります。

このエピソードはやや極端ですが、「情シス=社内のITっぽいこと全般を引き受ける部署」と見られているうちは、こういう想定外の仕事は多かれ少なかれ発生します。1領域を深く突き詰めたい人にとっては、地味にストレスがたまる部分です。

3. システム入替・繁忙期は局所的にしっかり忙しい

通常月は確かに楽なんですが、システム入替や年度末・年度初めのような節目の時期は、しっかり忙しくなります。

過去に販売管理システムの刷新を経験したときは、ユーザーテストから実稼働までの期間が、一番ぐっと忙しくなるタイミングでした。情シス側も業務部門と一緒にテストに入り込んで、動作確認と修正反映を繰り返す必要があるんですよね。

それに加えて、利用者分のクライアント端末の入れ替え作業もありました。キッティングサービス(PCの初期設定を代行してくれるサービス)を使っていたので一から設定する必要はなかったのですが、それでも台数が多いと現場での最終調整だけでなかなかの工数になります。

普段は定時で帰っているのに、こういう節目だけ急に夜遅くまで残る、というギャップに最初は戸惑った記憶があります。

「常に楽」ではなく「平時は楽だが、節目はちゃんと忙しい」が実態に近いと感じています。

「楽すぎ」が当てはまる人/当てはまらない人

ここまでは自分の現場で感じている話を中心に書いてきましたが、ここからは少し視点を引いて、社内SEを「楽すぎ」と感じやすい人とそうでない人の傾向を整理しておきます。

当てはまりやすい人

  • 複数のタスクを並行して回すのが苦にならない
  • 1つの領域を深掘りするより、広く浅く担当することにやりがいを感じる
  • 人と話すのが嫌いではなく、社内の問い合わせ対応も気にならない
  • ワークライフバランスを最優先したい

このタイプの人は、社内SEの「楽な側面」を素直に受け取りやすく、長く働きやすい傾向があります。

当てはまりにくい人

  • 1つのタスクにじっくり集中したい
  • 1領域の専門性を尖らせたい(例:インフラのスペシャリストになりたいなど)
  • 人からの問い合わせ対応や雑多な業務にストレスを感じやすい
  • 開発の手を動かす時間をできるだけ多く取りたい

このタイプの人は、たとえ残業が少ない職場であっても、業務の進め方そのものにストレスを感じやすいので、「楽すぎ」と言われる感覚が腑に落ちないと思います。

「楽な社内SE求人」を見極める3つのチェックポイント

「自分は楽寄りの感じ方をしそう」と判断したうえで、それでも「楽な会社を選びたい」と思った場合に、求人票や面接で確認しておきたい項目を3つ挙げておきます。

1. 情シスの人数規模

情シスの人数は、楽さに直結する一番大きな要素です。

1人情シス(情シス担当が自分1人だけ)の会社は、求人票だけだと「裁量大きい」「幅広く担当」と書かれていて魅力的に見えますが、実態としては「全部1人で見るしかない」状態です。トラブル対応も問い合わせも全部自分に来るので、心理的な負担は相当大きくなります。

面接の場では、「情シスは何名体制ですか」「担当領域はどう分担されていますか」と直接聞いて、最低でも2〜3名以上の体制かどうかを確認しておくのが安心です。

2. 自社開発比率と外注・SaaS依存度

社内システムをどこまで自分たちで作っていて、どこから外注やSaaS(クラウドサービス)に任せているかも、楽さに大きく影響します。

自社開発の比率が高いと、開発・改修・運用すべてが自分たちの担当になるので、業務量は当然多くなります。逆に、業務システムをSaaSや外注ベンダーに任せている割合が高ければ、社内SEは「窓口役・調整役」に近いポジションになり、相対的に手が空きやすくなります。

「楽さ」を取りに行くなら、外注・SaaSの活用度合いが高い会社を選ぶのが合理的です。

3. 問い合わせ一次窓口の体制

社員からの問い合わせを、どこで受け止める仕組みになっているかも要チェックです。

ヘルプデスク部門が別にあって、簡単な問い合わせはそちらで一次対応してくれる会社だと、社内SE本体は本来の業務に集中しやすくなります。一方、情シスが直接全部の問い合わせを受ける体制だと、先ほど書いた「割り込みでマルチタスク常態化」が確実に発生します。

面接では、「社員からの問い合わせはどういう経路で情シスに届きますか」「ヘルプデスク窓口は別に置かれていますか」あたりを聞いてみると、運用イメージがつかめます。

まとめ:ラベルで判断せず、自分の業務スタイルと照らし合わせる

正直に言うと、「楽すぎ」とまで言うのはさすがに言い過ぎだけど、「楽」ではある、というのが現役で働いている私の感覚です。ただし、いつ何時も楽というわけではなく、システム刷新のような節目はちゃんと忙しくなります。ここはこれから社内SEを目指す方にも、ぜひ知っておいてほしい部分です。

確かに、残業時間や納期の圧、人間関係の安定感といった「分かりやすい指標」では、SIerなどと比べて楽な部分が多いです。一方で、問い合わせ対応・マルチタスク・何でも屋的な業務範囲といった「業務スタイル面の負荷」は、ネット上の「楽すぎ」イメージにはあまり載ってきません。

「楽すぎ」というラベルだけを見て飛び込むと、業務スタイルが噛み合わずにギャップを感じる、という後悔は普通に起こります。気になっている方は、自分の業務スタイルを冷静に振り返ったうえで、求人選びでは情シスの人数規模・自社開発比率・問い合わせ窓口体制の3点をチェックしてみてください。

社内SEに転職して感じた具体的なギャップについては、別記事「現役社内SEが語る『後悔した5つのギャップ』」で書いています。

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